
レポート】 ビデキンちゃんが行く ~NAB2017~

今年もいってきましたよラスベガスで開催されるNABに。いつもの年と違って今年は開催が遅いんですね。なので、昨年より気持ち暑い気がします。それでも初日は結構風が強くて乾燥していることもあるでしょうが、日陰は涼しくて心地良かったです。
そういえば昨年もそうだったんですが、入口に警備のスタッフと一緒に犬を連れた女性が立っていました。毎年通っているいつものおじさまに聞くとテロ対策だそうで、犬は爆弾とか危険物を察知するための警備のスタッフと一緒に行動しているそうです。日本でも2020年に開催されるオリンピックでこういった警備体制にするんでしょうかね。


会場を出入りするたびに見ていたんですが、いつもきっちりと警戒していました。昨年は警備のひとはいましたが、犬は時々いない時があったんですけどね。さて、こうした厳重な警備を通り抜け早速展示会場にはいってみましょう。
今年は昨年までとは違って初日は一通りすべてのブースをまんべんなく回ってめぼしい機材に目を付けておいて2日以降詳しく見て回ろうと思います。
ということで、最初はノースホールです。ここにはNHKが8Kを中心に出展していました。昨年は中継車なんかもあってかサウスホールの奥なのに人気のあったブースです。今年は少し人数が減った気がします。8Kってもうここでしか見られないわけではありませんし、それだけ一般的になってきたということでしょうか。

8KカメラのMTF測定。今後様々なメーカーから8Kカメラが出てくることが予想され、客観的にカメラの性能を評価しようということです。

8Kというとまだ先の話ということで、2020年とか未来のリビングなんかは今までもやってたんですが、今年度版がでてました。
NHKがブースを構えるこの一角はFutures Parkというエリアになっていて韓国のUHDブースも出展しています。4Kに関してはすでに試験放送とか始めていて、関連する機器メーカーや4K対応の放送局なんかもかなりあるようです。圧縮や送信にかかわる技術的な出展などもあり、かなり積極的に推進している印象です。韓国にはLGとかサムソンといったメーカーがテレビの大きなシェアをもっているんですが、中国とか途上国も最近力を付けてきていて、価格的な競争では難しくなってきたという事情もあるようです。この点では日本が4K8Kに力を入れているのと同じような事情があるみたいです。

韓国でもすでに4Kの試験放送を始めているそうで、実際どのくらいのクオリティなのかをデモしていました。

4K8Kを含めた韓国放送のロードマップが公表されていました。これによると2018年に開催される冬季オリンピックで4K放送を2020年から2025年にかけて8K放送を開始するようです。ちょっと気になったのは2020年にVR Hybrid Broadcastingの文字があることで、NHKでは4K8Kの次は3Dを目指しているのとは違ったアプローチを考えているようです。
ノースホールにはほかにもVR Pavilionというコーナーがあって、ちょっと見た感じカメラとは思えないようなデザインの360°撮影カメラや360°撮影するために複数のカメラをセットするリグとか映像を見るためのゴーグルみたいなものが出展されています。小ぶりなブースが多いんですが、ユニークな機材が多くて見るだけでも楽しいです。

GoProをマウントできる360°撮影用のマウントを制作している360RIZE社。ブラックマジックデザインのカメラ用のマウントもありました。

8台の4Kカメラを搭載したカメラ部分Vuze VR CameraとHumaneyes VR Studioという専用ソフトをセットで扱っているvuze camera社。

360°撮影可能なアクションカメラKodakのPIXPRO。ニコンさんでも同じようなコンセプトでカメラを発売していますね。

ノースホールにはRossさんやEvertzさんなど大きなブースを構えていますが、このへんはスルーしてセントラルホールに移ることにしましょう。まずはカメラメーカーを中心に見てみましょう。最初はパナソニックさんです。ちょっといつもとブースの感じが違うような気がしますが、AVCネットワークス社からコネクティッドソリューションズ社になり、社内の体制が変わったことに関係があるのでしょうか。パナソニックではVARICAMに力を入れているようで大きなスペースを割いています。VARICAMシリーズがアクリルケースに並べられているのですが、その末席にベールがかぶせられたカメラがありました。小型軽量で大判センサーを搭載したカメラだそうで、安価な記録メディアを採用していてワークフロー全体のコスト低減が実現できるそうです。もっぱらの噂ではGH5に使っているセンサーや画像処理を使ったVARICAMシリーズのローコストバージョンのカメラではないかとのこと。だとするとマウントはMFTでSDメモリー採用でしょうね。たぶん。

ベールがかかったVARICAMシリーズに新たに登場する予定のカメラ。詳細はCine Gearで発表するそうです。
次ソニーさんですが、UMC-S3CAっていうちっこいカメラがでていました。このカメラはドローンにのせたりVRのようにたくさんのカメラを必要とする現場用のもので、記録系は内蔵されていますが画像を確認できるモニターは付いていません。レンズマウントはEマウントで、4Kのカメラとなっています。最大ISO 40960の感度をもっていて0.004 lxでも撮影かのというところがすごいかも。

UMC-S3CAはマルチカメラでの運用が前提なのでゲンロック対応となってます。メモリーへの記録とHDMI端子も装備されています。
JVCケンウッドは旧ビクターの流れであまりケンウッドの影響のある製品を表に出していませんでしたが、今回アンテナを装備した車が2台もブースに出ていました。カメラで撮影した映像をワイヤレスでこの車に伝送してネットなどに再送信するシステムです。ケンウッドは無線機など電波を扱う機器で定評のある会社なので、本領発揮というところでしょう。

JVCケンウッドWB-CELL200 Mobile Bridge。4G LTEやGPSに対応しており、複数のカメラを同時に運用することができます。
そうそう、ARRIは今回ALEXA SXT Wという新たなモデルを出品していました。これもワイヤレスで映像やデーターを送信できるようになってます。

ARRIのワイヤレス伝送を内蔵したALEXA SXT W。映像本線系とおもにコントロールの行うWi-Fiが内蔵されている。
ざっとカメラメーカーを見てきましたが、ほとんどのメーカーは映像のワイヤレス伝送に対応したカメラを出しています。国内ではいまいちですが、海外ではカメラから直接映像をワイヤレスで伝送するのが当たり前になりつつあるようです。国内ではやらない理由の一つはキャリアの料金ではないでしょうか。もっと安い料金プランができるとか使ったときに使った分だけ払えるようなプランができるといいですね。カメラメーカーも独自に動いているようなんですが、自社の製品と絡めていたり、クラウドサービスと共に使うことを前提としていることが多いみたいです。
4Kが当たり前になってくるとIP化が進むでしょうから、その時がきっかけとなってワイヤレス伝送が普及するかもしれませんが、キャリアさんたちが映像伝送に関してもう少し関心をもってくれないとダメかもしれないです。このあたり既存のキャリアさん以外に映像伝送を専門とした会社とか出てきそうですね。
最近レンズメーカーから毎年のように新製品がでていますので、レンズ関係のブースを見てみましょう。レンズの流れとしては4K対応のB4マウントレンズとデジタルシネマ系のレンズがありますが、B4マウントのレンズはキヤノンとフジノンの2社がほぼ独占状態です。4K8Kの放送に関しては日本が中心に先鞭をきっているので当然なのかもしれませんが、元々B4マウントのレンズを手掛けているメーカーがこの2社とAngenieuxくらいしかなかったというのもあるでしょうね。今までのノウハウやカメラメーカーとのつながりとかあって新規参入が難しいようです。一方デジタルシネマ系のレンズは老舗だけでなく新規参入もあり、価格的にもまさにピンからキリまであります。
キヤノンは今回スーパー35mmセンサーサイズに対応した望遠系レンズとしてCN-E70-200mm T4.4 L IS KAS Sを発表しています。フジノンからは価格を抑えた新たなFUJINON MKシリーズとしてMK18-55mm T2.9とMK50-135mm T2.9が、トキナーはVistaシリーズとして4本の単焦点レンズがありましたが、今回25mmが加わりました。新規参入組といえるシグマはデジタルシネマ用レンズSIGMA CINE LENSシリーズを出展しています。海外メーカーではAngenieuxがOptimo Style 48-130 T3をZeissがCompact Prime Cp.3のレンズラインナップを発表しています。ZeissのCompact Prime Cp.3はCp.2と光学系はほぼ同じで、カメラとメタデータをやり取りするための電気接点やコネクターを備えています。ほかにもCookeやライカのほか中国系のレンズメーカーなんかもあって正直すべてをチェックしきれない感じです。

キヤノンCN-E70-200mm T4.4 L IS KAS S。4Kカメラに対応したCOMPACT-SERVOレンズシリーズで、オプションでENGレンズのように使える電動グリップや放送用で標準の20ピンリモートなどが装備されている。

FUJINON MKシリーズMK18-55mm T2.9。Eマウント以外にXマウントのモデルも登場しました。

ZeissのCompact Prime Cp.3XDシリーズはメタデータ用の電気接点が追加された他レンズのコーティングやフォーカスのトルク、大きさ重さが若干小さくなっている。

セントラルホールにはまだまだ見るべきところが沢山あります。どんどん行きましょう。毎年NABで新製品を発表するATOMOSは今年19型画面のレコーダーATOMOS SUMOを発表しました。レコーダー部分の基本性能はSHOGUN INFERNOと同等だそうです。GoProはカメラとしては4K対応のHERO5が既に登場していましたが、ドローンが正式に再生産になりました。ドローンで有名なDJIはRonin 2というカメラサポートを発表しました。すでにOSMOやRoninなどがありますが、Ronin 2はかなり大掛かりなものとなっています。

4K収録時でもピント合わせが容易に行えるATOMOS SUMO。パネルはHDR対応で1920×1080の高輝度タイプを採用しています。

ATOMOS SUMOの裏側です。パネルが大きくなっているので、電源もそれなりに大容量なものが必要になりそうですね。オプションでVマウントのバッテリーアダプターなどが用意されるそうです。

GoProのドローンKarma。昨年発表になっていたんですが、発売を中止していました。不都合個所を解決し発売になったということでした。

Karmaのカメラマウント部分は3軸制御のジンバルになっていてHERO5をマウントするようになっています。

耐荷重最大13.6kgまでとかなり大きなカメラでも搭載可能なdji Ronin 2。カーボンファイバー製でジンバル部分を分離してクレーンや車両搭載などいろいろ使いまわしができるそうです。

dji Ronin 2のジンバルはステディカムと組み合わせ可能で、リモート制御によりカメラとオペレーターの2人で運用できるようになっています。

ManfrottoはNitrotech N8という新型のヘッドを発表。カウンターバランス機構に窒素を充填したピストンを採用しています。調節は無段階で8kgまでの耐荷重となっています。

リーダー電子はマルチウェーブフォームモニターLV5490にIPインターフェースグループオプションや12GEYEパターンオプションを出展しました。

ヘイワズームフォーカスリモコンZFC-L。ソニーやキヤノンのカメラに対応したLANCコントロールとなっています。45mmまで取り付け可能なので、パン棒以外にも装着できます。価格は1万円台後半になるようです。

ヘイワズームフォーカスリモコンZFC-Lのズームレバーは左右制御を反転させるモードスイッチが装備されていてリモコンを逆さに付けてもズームレバーが反対にならないようになっています。

ゼンハイザーMKE2 Elements。GoPro HERO4カメラ用高品質防水マイクで、GoProのハウジングの背面部分を交換して取り付けるようになっています。

センターホールには見るべきブースが沢山あるのですが、そろそろサウスホールにもいってみようかと思います。サウスホールにはブラックマジックデザインが出展していてNABではいつも新製品を発表しています。REDもサウスホールなんですが、今年は出展していないそうです。REDが登場したときは個人でも所有できるデジタルシネマカメラということで、それ以来ずっとNABに出展していたんですが、最近は他社もデジタルシネマカメラをリーズナブルな価格で発売していて以前のようにREDのアドバンテージもなくなってきたということもあるのかもしれません。REDは独自のコミュニティサイトを立ち上げていて情報交換なんかも盛んにおこなわれていますので、NABのような機材展に出展しなくなったのかもしれませんね。




だいぶ駆け足でしたが、それでも沢山の新製品が出ていたのがお分かりいただけたかと思います。全体的に今年はもう4K8Kを各メーカーともにあまり前面に打ち出していないように見受けられました。その代りHDRがカメラでも編集機でも対応をうたっていました。ITU-R BT.2100規格により4K8KだけでなくHDにもHDRが適用できるようになったことが大きいと思います。放送の現場ではカラーグレーディングなんかやってられないという現場もあるので、そうした作業を行わなくてもHDR対応で撮影できたり編集できるソリューションが各社の目玉だったといえそうです。この後は、個々のブースをもう少し詳しく見ていきたいと思います。