
【レポート】 ビデキンちゃんが行く ~NAB2017 キヤノン編~

昨年キヤノンさんはEOS C700を発表しましたが、今年はそのPLマウントバージョンが7月発売の新製品として出品されていました。レンズ関係ではUHD対応のDIGISUPER 27(UJ27×6.5B ISS)と2/3インチ高倍率ズームレンズHJ40e×10BおよびHJ40e×14B、10月発売のデジタルシネマ系のズームレンズCN-E70-200mm T4.4があります。キヤノンさんは今年創立80周年を迎えてるんで個人的にはXAかXFシリーズの新機種発表を期待してたんですけどね。
現状ではXCシリーズが最初から4K対応で、XAとFXは4K対応の機種が今のところないので、いずれ出てくるとは思いますが、キヤノンさんは2020年には今とはまったく違う新しいキヤノンへと生まれ変わるって言ってますので、カメラやレンズがどういう方向に向かうのか期待したいですね。商業印刷やネットワークカメラ、ヘルスケア、有機ELや半導体のための産業機器に力を入れていくみたいなので、その絡みでなにか新しいコンセプトの製品が出るのかも。
さて、それでは新製品から順番に見ていきましょう。まずはEOS C700 GS PLです。昨年EFマウントのC700と同時に発表されたんですが、PLマウントのモデルだけ発売が延期になっていました。PLマウントのレンズも最近はレンズ情報をやり取りするための電気接点(インターフェース)が装備されているのが主流となりつつあるんですが、いくつかメーカーによって接点やコネクター、データーのやり取りの方式が違っていて、そこらへんの調整に時間がかかったみたいです。ちなみにEOS C700 GS PLが採用しているのはCookeというシネレンズのメーカーのi Technologyというものを採用しています。キヤノンさんのレンズでもCN7×17 KAS S/P1やCN20×50 IAS H/P1がこのi Technologyを採用しているのでその流れなんでしょうね。

EOS C700 GS PL。4K60p収録が可能なほか、写真のようにCodex社のレコーダーCDX-36150を装着すると最大120Pの4K RAWを記録することができるほか、最大15StopのCanon Log 2と14StopのCanon Log 3を搭載していてHDR撮影にも対応できます。PLマウントモデルなので、デュアルピクセルCMOS AFには対応していないので注意してください。
デジタルシネマというと単焦点レンズでズームレンズはちょっと特殊という感じだったんですが、最近ではズームレンズも普通に使われるようになってきたようです。カメラも小型軽量になったりして撮影スタイルも従来とは違ってビデオ的な方式で撮影する現場も多いようです。レンズもこうした撮影スタイルやカメラの小型軽量化にマッチした製品が出てきています。今回新製品のCN-E70-200mm T4.4もそうしたコンセプトを元に開発されていて、オプションの専用グリップZSG-C10を装着するとENGレンズのように使うことができるようになっています。EFマウントということもあるんですが、デュアルピクセルCMOS AFによるオートフォーカスにも対応しています。ただ、カメラは対応機種として現状はEOS C300 MarkIIとEOS C100 MarkII、EOS C700の3機種のみとなっています。シネ系のレンズなので周辺光量補正や倍率色収差補正といったメタデーター対応です。

CN-E70-200mm T4.4。EOS系のカメラだけでなくブラックマジックデザインさんなど他社のEFマウント採用カメラに対応できるよう、マウントにフランジバックの調整機構を搭載していて、プッシュオートアイリスおよび連続オートアイリスにも対応しています。シネレンズというよりENGレンズに近い仕様ですね。

CN-E18-80mm T4.4。 CN-E70-200mm と同じシリーズのズームレンズで、こちらも専用グリップZSG-C10の装着やデュアルピクセルCMOS AF対応になっています。
4K8K放送も目前になりすでに試験放送なども盛んに行われています。放送の場合デジタルシネマと違ってスタジオや中継ではセンサーサイズが2/3インチのカメラを使うのが一般的な流れになっているようで、対応レンズがキヤノンさんだけでなくフジノンさんからも出ています。今回キヤノンさんが出展した新製品のレンズDIGISUPER 27は主にスタジオでの使用を目的として開発されたレンズで、6.5mmからの27倍ズームとなっています。スタジオで使う場合中継と違って近くも撮影しなくてはならないので、最短撮影距離は0.6mになっています。ちなみに中継とかの用途の高倍率ズームDIGISUPER 86やDIGISUPER 90は3mです。ほかにもスタジオ用なので、バーチャルスタジオで必要になるエンコーダー出力に対応していたり、ズームサーボ機構の静粛性などの特徴を備えています。

DIGISUPER 27。バーチャルスタジオシステムで必要となる焦点距離や被写体位置などのレンズ位置情報を、高精度のセンサーで読み出し出力することのできる20pinコネクターを標準装備しているほか、カメラマンの思い描く操作により近づく細やかな設定が可能なズームサーボ特性を設定機能を搭載しています。
キヤノンさんはレンズやカメラだけでなくて最近はモニターも開発しています。今回のNABでもHDR対応の4KモニターDP-V2420やDP-V1710を新製品として出展していました。あと、参考出展の高輝度HDRモニターもありました。4K8Kとなるとモニターはピントの確認やプレビューなどの必要性から、撮影現場でもある程度のサイズが求められるようになったり、各種ガンマへの対応が必要だったりするので、おのずと新製品が登場したり、すでに発売した製品でもバージョンアップで対応したりで、目が離せない製品の一つといえそうです。

参考出展の30型4Kモニター。10bitとIPSパネルと18bitの画像処理エンジンを搭載しており、ピーク輝度2000nit、400000のダイナミックレンジを達成しています。

4K対応リファレンスモニターDP-V2420。HDR規格であるSMPTE ST 2084、Hybrid Log-Gammaに対応しており、HDR制作に必要なハイダイナミックレンジをリニアに表示することができます。正確な階調・色を確認することが可能なのでカラーグレーディングなどの作業にも最適ですね。

ラックマウント対応の4KリファレンスモニターDP-V1710。DC12V対応なので、中継車への搭載やフィールドなどでフォーカスの確認などで利用可能です。また、波形モニターやLogプリセット機能などを装備しています。

キヤノンさんは毎年シアターで自社の製品で撮影したコンテンツを上映していましたが、今年はブースにVRのコーナーがあってドーム状のスクリーンを横になって視聴していました。
カメラが新機種に変わってもレンズはそのまま使い回しできるっていうのがSDのころは一般的だったように思いますが、4K8Kの時代になるとイメージサイズは違うわ撮影スタイルは多様化するわでホントに沢山のレンズが出てきましたね。特にイメージサイズの違いは致命的で多少ボケるとかではなくてまったく写らない部分が出てきてしまいます。マウントも種類の分類もできないし、ほんとめんどくさい。でも、高価なレンズから安価なレンズまで選択の幅は確実に広がりました。うまく選択すればきっとピッタリのレンズを見つけることができると思います。